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2025.09.04

「日印戦略対話」開催報告 —アジアのグローバルな責任:分断する世界に向けた日印戦略的収斂ー

2025年8月20日から22日の3日間、国際文化会館はインドのシンクタンクであるアナンタ・アスペン・センター(Ananta Aspen Centre)と共催し、第4回「日印戦略対話」を開催いたしました。本対話は、日印両国間の戦略的対話の基盤として、インド太平洋における地域秩序、安全保障、経済協力、技術革新など幅広い分野に関する議論を深めることを目的に実施されました。

1日目

外務省において、船越健裕次官およびアジア大洋州局の野村恒成参事官にご登壇いただき、インド側参加者とのラウンドテーブルを開催しました。ここでは、日印戦略的協力の現状と今後の展望について率直かつ建設的な意見交換が行われました。

2日目

2日目は、駐日インド大使シビ・ジョージ閣下による基調講演で幕を開け、日印関係をさらに深化させるための展望と課題についてご講演いただきました。その後は4つのセッションのテーマごとに活発な議論が交わされ、日印関係のさらなる深化に向けた意義ある対話となりました。

 第1セッションでは、日経新聞社コメンテーターの秋田浩之氏をモデレーターに、アナンタ・アスペン・センターCEOのインドラニ・バグチ氏、慶應義塾大学法学部教授の森聡氏、国際文化会館理事・慶應義塾大学法学部教授の細谷雄一氏を登壇者として、第2次トランプ政権がアジアにおける米国の戦略姿勢に及ぼす影響を検討しました。防衛、通商、技術規制、同盟関係などへの波及を踏まえ、日本やインドを含むインド太平洋諸国が地域の安定とルールに基づく秩序を維持するための方策について議論が行われました。

第2セッションでは、国際文化会館地経学研究所主任研究員の相良祥之氏をモデレーターに、インド国家安全保障諮問委員会メンバーで海軍大学校兼任教員のモンティ・カンナ氏、東京大学公共政策大学院客員教授の髙見澤將林氏、統合戦争研究センター特別フェローのウルピ・ボラ氏、国際文化会館地経学研究所主任研究員の小木洋人氏を登壇者として、インド太平洋における安全保障と日印戦略的協力の可能性について議論しました。海洋状況把握、共同軍事演習、情報協力、防衛産業分野での連携に加え、自律型システムやサイバー防衛といった新興技術分野での協力のあり方が検討され、強靭でルールに基づく地域秩序の構築に向けた具体的方策が提示されました。

続いて開催したランチセッションでは、外務省総合外交政策局長の有馬裕氏をゲストスピーカーに迎え、日本側の視点から第2次トランプ政権に対する見方について講演いただきました。参加者との意見交換では、今後の国際秩序や地域協力の展望について活発な議論が交わされました。

第3セッションでは、アナンタ・アスペン・センターCEOのインドラニ・バグチ氏をモデレーターに、地経学研究所所長・鈴木一人氏、タタ・エレクトロニクス渉外責任者のラフル・ジャイン氏、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)調査部長の原田大輔氏、インド工業連盟(CII)テクノロジー・R&D・イノベーション・デザイン担当エグゼクティブディレクターのアシシュ・モハン氏を登壇者として、経済安全保障とサプライチェーン強靭化について議論しました。通商・技術の戦略的活用が進む中、日本とインドを含む国々が産業政策、信頼できる貿易ネットワーク、経済的手段を通じていかに戦略的レジリエンスを確保するかが検討されました。

第4セッションでは、国際文化会館常務理事の神保謙氏をモデレーターに、日本総研国際戦略研究所理事長および元駐インド日本大使の平松賢司氏、戦略防衛研究評議会特別フェローのC・ラジャ・モーハン氏を登壇者として、分断が進む国際秩序の中での日印戦略的パートナーシップの在り方について議論しました。欧州における紛争やインド太平洋地域の緊張など、国際的な地政学的変化を踏まえ、両国が安定的で包摂的な国際秩序を強化するために、政治対話の深化、アジア・欧州・グローバルサウスとの関与、ルールに基づく国際規範の維持に向けた戦略的な橋渡しと協調の在り方が検討されました。

 夕食レセプションでは、国際文化会館理事長の近藤正晃ジェームス氏が、日印両国の長年にわたるパートナーシップを称えるとともに、今後の知的交流のさらなる深化への期待を込めて歓迎の挨拶を述べました。続いて、法務大臣の鈴木馨祐氏がゲストスピーカーとして登壇し、二国間関係の重要性や共通課題への協力の可能性について語られました。その後、参加者同士が交流を深め、日印間の信頼と友情を一層強固にする貴重な機会となりました。

3日目

最終日の公開フォーラムでは、日本とインドの有識者や政策担当者が一堂に会し、大国間競争の激化や国際秩序の不確実性が高まる中、地政学、経済安全保障、二国間連携という三つの視点から、インド太平洋における地経学的変化について活発な議論が行われました。

今回の対話を通じて、日印両国が共有する戦略的利益や価値観に基づいた協力が、今後さらに深化していくことが期待されます。日印関係はインド太平洋地域の安定と繁栄を支える不可欠な柱として新たな段階へと進展しており、両国が協力して国際秩序の構築と課題解決に貢献していくことが期待されます。国際文化会館とアナンタ・アスペン・センターは、今後も引き続き、日印間の相互理解とパートナーシップの強化に取り組んでまいります。