Programs プログラム
-Geoeconomics地政学・国際関係・地域研究
2024.01.31
「もしもトランプ」に備えた東アジア諸国の同盟政策(地経学ブリーフィング)
東アジアにおけるアメリカの同盟国は、アメリカ大統領選を、不安を持って注視している。アメリカの東アジア政策にどのような影響を及ぼすのか。仮にトランプ前大統領が勝利した場合、根本的な方針転換が生じるのか。日米同盟にとっての懸念材料は何か。共和党党員集会緒戦でトランプ氏が圧倒する中、「もしもトランプ(もしトラ)」の場合の影響を検討しておく必要性が増している。少なくとも、トランプ氏が再選された場合の2期目は、多くのアメリカ国民、とりわけ政府の対外政策を担うエリートにとって、ストレスフルな日々となるだろう。トランプ政権で国家安全保障担当の補佐官を務めたジョン・ボルトン氏の回顧録によれば、首席補佐官であったジョン・ケリー氏は同氏に対し、「私がどんなにここから離れたいと思っているか、君には想像もできないだろうな。ここはひどい職場だ」と語った。大統領以前の問題として、直属の部下にこのようなことを言わせる人間には、組織のリーダーとして疑問符が付く。また単なる錯誤と思い込みに基づく政策決定の混乱も想定される。2019年、トランプは議会が決定した「ウクライナ安全保障援助イニシアティブ(USAI)」に基づく2.5億ドルの軍事援助予算の執行を迫られた際、アメリカ国内の援助枠組みであるにもかかわらず、(公平な防衛分担を行っていないと自身が糾弾してきた)「NATOに支払わせろ」と指示して判断を遅滞させた(同回顧録)。同様の混乱が台湾に対する軍事援助や、日米同盟、米韓同盟を巡る財政的な負担分担において生じる可能性は否定できない。