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-Geoeconomics地政学・国際関係・地域研究

2023.10.11

EUは戦略的自律を高めることができるのか(地経学ブリーフィング)

EUでは「戦略的自律(Strategic Autonomy)」に関する議論が活発である。元々はフランスが戦後の米国との関係で唱えてきた考え方であるが、近年はフランスがEUの舞台でも度々この言葉を持ち出し議論されるようになった。その定義は明確に定まっていないものの、EUが自身の政策を決定するプロセスにおいて他国からの影響を受けずに政策決定を自律的に行なうという考え方である。派生形としては、「開かれた戦略的自律(Open Strategic Autonomy)」という用語が、EUの経済安全保障の文脈で使われる。EUが多国間での公正な自由貿易等を推進する立場にあることは変わらないものの、世界貿易機構(WTO)の上級委員会が機能不全に陥る中、EUの自律性が失われそうな場合にはEUが自ら必要な行動をとるという考えである。この前提に立って、前回の論考でも取り上げられた、EUの経済安全保障戦略の「3つのP」である「①推進(Promotion)」を実行するための重要法である「欧州半導体法(European Chips Act)」、「②保護(Protection)」の重要規則にあたる「反威圧措置(Anti-Coercion Instruments: ACI)」について概観した上で、これら政策によりEUは戦略的自律を高めることができるのかを見ていきたい。最後に「③協力(Partnering)」の観点からEUの日本との連携についても述べたい。

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